自宅での皮下輸液

   始めに

輸液には、大まかに分けて2種類の方法があります。

1: シリンジ使用→輸液パックから1回分ずつの液をシリンジに吸って使う方法。
2: 輸液パックから直接→輸液パックに針を繋ぎ、パックから直接、猫さんの体内に液を入れる方法。


うちではシリンジを使いますが、輸液パックから直接の方法を指導している獣医さんもたくさんいらっしゃいます。
他にも細かい部分で、病院によって輸液方法には違いがありますので、以下は参考程度に見てください。
自宅で皮下輸液を始める前に獣医さんから説明&練習があるはずですので、必ずそちらに従ってくださいね。

   自宅皮下輸液のための参考資料

 

 ネットで情報収集

獣医さんのHP。日本ベッツグループ内、皮下輸液のページ

ぎゃおす王国内・体験レポートbbsにも、自宅皮下輸液に関するスレッドがあります。
実際にやってらっしゃる方達の生のお話ばかりなので、参考になることがあるかと思います。
(パスワードを求められたら、『 ousama 』と記入してください。)

輸液の与え方〜暴れん坊の猫さんの場合
自宅で皮下輸液
輸液をしたあとに脇腹を痛がったんですが…
輸液セットの保存方法について
皮下輸液の際の消毒について

 自宅皮下輸液のムービー集

自宅皮下輸液のムービー集のページへどうぞ。

内容は、
シリンジを使った輸液の練習(動物病院で指導してもらったときのムービーです)

輸液パックから直接〜輸液の準備と手順

輸液パックから直接〜加圧帯を使用
加圧帯については、 このページのちょっと下のほう、『加圧帯について』をご覧ください。


   ちょっとしたコツ

毎日やってるうちに気がついた、ちょっとしたこつです。

 準備編

冷たいままの液を入れると、猫さんがいやがります。身体も冷えてしまいます。
夏は暖めなくてもよいそうですが、その時々で判断・調整してください。

★輸液の温め方 
獣医さんからの指導では「電子レンジ」「湯煎」でした。どちらも輸液パックごと温めます。
湯煎の場合は針を刺すゴムの部分がお湯に触らないように注意します。
私はいつも簡単な方、レンジでチンです。
チンしたあとパックが熱くなっていても、中身はそれほどでもないことが多く、また中身の液の温まり具合が均一ではない場合が多いので、パックを軽く振ったりもんだりしています。
シリンジに吸う間に液が冷めることも計算して温めます。
しかし少しくらい冷たいぶんには大丈夫ですが、熱すぎるのは危険なので絶対に避けます。
目安としてシリンジに吸って猫さんに輸液する前に、自分の指などにかけてみて、「冷たくない〜なまあたたかい」くらいにします。
もし熱すぎるようだったら、そのまま少し放っておいて冷めるのを待ちます。

★輸液パックの消毒
輸液パックのゴムの部分をエタノールで消毒します。
針を刺す丸く窪んだところは消毒用のコットンが届きにくいので、ぎゅうぎゅうと押し付けるようにして拭きます。

★針について
うちは輸液パックからシリンジに液を吸うときと、いっちゃんに刺すときに使うのは同じ翼状針です。
しかし針はおろしたての未使用が、刺したときに一番痛くありません。
一回でも使うと針先が鈍り、刺された時に痛いし不衛生です。
液を吸う針といっちゃんに刺す針とを分けたかったのですが、かかりつけの病院では「同じもので」という方針です。
「輸液パックのゴムに刺したくらいでは針先は鈍らない。
シリンジに針の付け替えをするときに指を刺したり、シリンジの先に手で触って汚染してしまうなどの事故が起こる可能性を少しでも減らすために同じ針で」という説明でした。
病院によっては分けてくれるところもあるようです。
充分気をつけて扱えば、分けたほうが「針の鮮度」という点ではいいような気がします。

もし猫さんに刺す前に針がどこかに触れてしまったら、エタノールで消毒して、それが完全に乾いてから使います。

★輸液パックからシリンジに吸うとき
急いで力いっぱいシリンジのピストンを引いて吸うと、細かい空気の泡がいっぱいできてしまいます。
後から取り除くこともできますが、ゆっくり吸ったほうがきれいに入ります。

急いで輸液を吸うとシリンジの中に細かい泡が・・。気になります。
上部に空気の層があります。通常は吸い終ったら抜くものですが。
ない場合はシリンジを引けば入ってきます。
この空気の層をシリンジの内壁に沿って動かします。
くまなく撫で回します。

細かい泡が全部、空気の層にくっつきました。あとはこれを抜くだけです。

注)うちではなるべくシリンジ内の空気を取り除いていますが、
少しくらい皮下に空気が入っても、通常は問題ないそうです。

★量と回数
体調によって若干の調整はありますが、うちでは基本的には毎日で、1日2回、1回60mlです。

★猫の皮膚は、思っていたより硬い
初めていっちゃんの背中に針を刺したときに、びっくりしたのがこれ。
すうっと刺さるものだと思っていましたが、針が皮膚を突き抜けるときに「ぷつっ」と「ぐさっ」の中間のような感触があります。
皮ありのウインナーソーセージに針を刺した感じ?
なすやリンゴに針を刺した感触という人もいて、それぞれなるほどという感じです。

   実践編

 

 針の指し方

輸液を始めるにあたっての最大の難関は、刺針(ししん)だと思います。
以下のイラストと説明文は、じいやさんからご提供いただきました。

うまくいった例。
三角テントを作ったら、垂直と並行の間ぐらいの角度で刺すと図のように刺さります。
うまく針が入っているときは、ジャンジャカとスムーズにシリンジが押せます。

針刺しの角度ok

 

失敗しちゃった例

針刺しの角度NG

皮に並行に入れすぎると、皮下ではなく皮の間に入ってしまいます。
そうするとパツンパツンの輸液ダマリができてしまいます。
皮が張っているので、パツンパツンの輸液ダマリがビクビクっとすることがあります。
うまく刺せていないときは、シリンジ押すのに力がいります。

図では皮下の中で出血していますが、刺した瞬間に皮からほんのちょっと血が出ているだけです。
少ししか出ていなくてもアルコールなどを浸したコットンで拭くと、いっぱい出ているように見えます。
血は放っておけばカサブタになるだけです。

輸液ダマリは、いつもよりは時間がかかりますが吸収されるはずです。
ただし、いつもより違和感を感じてしまうと思います。
無理にマッサージすると痛がるコもいます。

たまにはこんなこともあります。誰だってあります。
輸液に慣れる過程では誰しも経験することです。
進むために必要なことで、気にしてはいけません。

★管理人より
そうなんです。誰だって失敗することはあります。
私は獣医さんが刺針に失敗したところを(針先が皮を突き抜けて外に出た)目の前で見ました。
あるいは、慣れて上手になったと思っていたら、ある日突然、失敗が続くようになることもあります。
私は輸液スランプと呼んでいますが、そういう時期もまた、多くの人が経験します。

でも、大丈夫です。
失敗すると猫に申し訳なくて気持ちがワタワタになってしまうのですが、猫さん自身はおそらく、世話人が気に病むほどは気にしていません。
そういうときもあるさ、ってことで、慌てず騒がず、深呼吸をして気持ちを落ち着けて、やり直しましょう。

イラスト&説明文を提供くださったじいやさんのブログには、猫さんのケアや治療に関する情報がたくさん載っています。
面白楽しい記事もいっぱいです♪

 

 シリンジ使用@されるがままの猫さんの場合

モデル:いっちゃん@ぎゃおす王国

つままれて三角になってる皮膚の空洞に向かって、まっすぐ針を入れます。
角度が曲がってしまうと針先が内部で余計なところに刺さってしまったり、皮を突き抜けて外に出てしまったりします。

皮を厚くつまみすぎると、内部で針先が余計なところに刺さりやすくなるようです。
反対に薄すぎると、皮膚を突き抜けやすい。

針がなかなか入っていかないときは、針先がどこか余計なところに刺さっていることが多いようです。
正しい角度で刺せていれば、すっと入っていきます。

馴れてくると針を刺した時点で、もし失敗していたら分かるようになります。
しっかり針が刺せたら、シリンジのピストンをそっと引いてみます。
抵抗がありピストンが動かなければ成功です。

もしここでピストンが簡単に引けてしまい、シリンジの中に空気が入ってきたら、針先が皮膚を突き抜けて外に出ています。
どきっとしますが、一回抜いて、冷静に刺し直しましょう。

針先がどこか皮膚の内部に刺さっていると、血がシリンジ内に逆流してくることがあります。
怖いです。冷や汗が出ます。
深呼吸して気持ちを落ち着けてから刺し直しましょう。

写真は、猫が動かないように自分のひざではさんで押さえてます。
ピストンを軽く引いても何事も起こらず、正しく針が刺さっていることを確認したら、今度はゆっくりとピストンを押して液を入れます。
液を入れ始めると針が押し戻されて抜けてくることがあるので、最初だけ翼状針の翼の部分を、そっと押さえながらやるといいようです。
液が入り始めたら手を離しても、もう抜けてくることはあまりありません。

まれにピストンが堅くて押せないことがありますが、これは針先がどこかに刺さっているようです。
気を取り直してやり直しましょう。
猫の身体を軽く手で押さえながら液を入れます。
猫も触られていると安心するようで、大人しくしててくれます。
液が皮の内部に入っているのも触って確かめます。
終わったら針跡を消毒して、抗生物質の軟膏をつけます。
腎不全が進行していない猫さんだったら、消毒だけで大丈夫(腎不全は進行すると免疫力が落ちるのです)。
軟膏は毛に付くと、べたべたして固まってしまいます。
指で地肌だけに塗るのは難しいので、赤ちゃん用の細い綿棒の先に少しだけ薬をつけて、ちょんと針跡に塗っておきます。

 輸液パックから直接@大人しめの猫さんの場合

モデル:ししどさん@麦芽さん
麦芽さんの『薀蓄・雲泥ブログ』からパクりました。  薀蓄・雲泥のオリジナルページ  薀蓄・雲泥トップページ

輸液パック、使わないときは黒ビニル袋を被せて日陰に吊るしてあります。
先生に聞いたところ常温保存で、大丈夫ってことなので。

輸液パックを湯せんして温くする。
ほっぺにつけて、ほんのり温い程度で湯せん終了。
特製室内物干し(笑)に、S字フックをかけて輸液パックを吊るしている。
上のフックは向きが自在に変えられるので便利。
うちは輸液パックに、輸液ラインを繋いで、直接輸液する。
19Gの針、カット綿、サージカルテープを用意する。
うちは、皮下輸液にアルコール消毒はしてない。
輸液ラインに針を付ける。
ししどさん、ほとんど保定はいらない状態。
その日によって箱座りだったり、横になったり。
今日は、ちょと横向き。

皮膚をつまんで、位置決め。つまんだ三角の真ん中に
針を入れるため、毛をかき分けて針が刺せる位に皮膚を出す。

いよいよ、針を刺す。
先生に「びくびくしないで勢いを付けて」と言われブスっと刺していたが、わたしがブスっとやるとかえって引っ掛かる事が多いので、慎重にミシミシっと刺していって、針が隙間に入っているか、ほんのちょと、針を動かして確認する。
針を刺した後は、回りの皮膚をちょと持ち上げる。
(隙間を開ける感じ)これは、ししどさんが逃げなくなってから、出来るようになった。

画像はクリックで拡大します(別ウィンドウが開きます)

輸液中。保定は無し。
首の後ろを撫でつつ、輸液が落ちるのを待つ。
最近は一回刺しで、2分弱で100ml入るのと
ししどさんが逃げないので、針は手で持つだけ。

画像はクリックで拡大します(別ウィンドウが開きます)

前はサージカルテープで止めていた。
輸液に時間がかかるようなら、針を翼状針に替えて
テ−プ止めにしようと思っている。

止血のため、カット綿で押さえる。
ししどさん、輸液が終わると、そそくさとストーブの上に。
輸液溜まりを、ゆるゆると、さすってマッサージ。

輸液パックを絞って入れる場合には、メモリが読みにくいことがあると思います。
すぐ下の、『加圧帯・加圧器について』の、対策1)、対策2)という部分が参考になるかもしれません。

 加圧帯・加圧器について

加圧帯とは、シリンジを使わずに輸液パックから直接輸液する場合、パックに圧力をかけて早く液が落ちるようにするためのものです。

メリットは

1):輸液にかかる時間が短縮される。
2): パックを両手でぎゅうぎゅう絞る必要がないため(絞らないと、パックを高い場所に吊り下げていても液が落ちるのがゆっくりなため、終了までに時間がかかります。)、手が自由になり、猫さんを撫でたりしながら輸液できる。

デメリットとしては、輸液パックが加圧帯で覆われてしまうため、どのくらいの量が減ったのか分かりにくいそうです。
裸の輸液パックでも、絞って直接入れる場合は、メモリが読みにくいような気がします。
加圧帯を使っていない場合でも、以下の対策は有効かも。

対策1):時間を計って、おおよその輸液量を把握する。
このページのちょっと下、『加圧帯を使用して、輸液パックから直接@協力的な猫さんの場合の項を参考にしてください。

対策2):手秤(てばかり)を使って、重さを量りながら入れる。
デジタル手秤という便利なものもあります。↓は、楽天から無断でパクってきた画像。

手秤 デジタル手秤

加圧帯の画像

情報提供:雨さん

↑のチョロちゃん雨さんペアがご使用のものです。
製品名: インフュサージ
製品詳細ページはこちら

 

情報提供:らみさん

テルモの加圧器です。
上記インフュサージと同じく人間用ですが、動物にも使われています。

正面の画像

加圧器を使用しないで加圧する方法  情報提供:らみさん

★輸液パックに空気を注入
250CCぐらいの輸液パックで、7〜10日以内に使い切るような場合でしたら、空気抜きの長い針がついていると思うので、その長い針と、大きなシリンジを使い、輸液パックの中に空気を結構何回も入れるのです。
輸液パックがポンポコリンになる感じにすると、中に入った空気の圧力によって輸液が素早く皮下に注入することが出来ますよ。(うちの動物病院さんもこの方法)
ソルラクトとや生理食塩水なんかだったら、中身は食塩水だから空気に触れても雑菌は繁殖しづらい環境だとは思うけど、念のために冷蔵庫で管理しつつ、早めに使い切るのが前提ね。
(獣医さん曰く、輸液をネコさんが飲んでくれるのならそれでも脱水は緩和されるので良いですって言われたので、輸液なめてみたの、結構しょっぱいのよ!!こんなの飲めるネコ居ないって。^^;)

輸液にビタミン剤を混ぜて使う場合があるけど、これも冷蔵庫で管理しても1週間が限度らしい。
(ちなみに、輸液にビタミン剤混ぜるとネコにはしみるらしい)

★血圧計を流用
加圧器は、人間の腕でやる血圧計と仕組みは同じだから(シュポシュポ)、家に家庭用の血圧計があれば代用できると思うよ。
ただ、血圧計はメッシュになってないので輸液パックの目盛りが見えないという欠点があるので、例えば250CCを2回で使い切るとしたら最初の1回目はシリンジで空気入れて素早く点滴して、2回目の残り分量なら目盛りみる必要はないわけだから、そしたら血圧計ごと鴨居にぶらさげて素早くやるとかね。

ネコさんにとって輸液は楽しい時間ではないから早く終わらせて
あげたいですもんね。(*^^*)

 

 加圧帯を使用して、輸液パックから直接@協力的な猫さんの場合

加圧帯を使った輸液の手順などは、皮下輸液ムービー集(ページの上のほうで紹介している皮下輸液ムービー集と同じページです)でご確認ください。
ムービーを見ますと、加圧帯を使用すると両手でぎゅうぎゅうとパックを押さなくて済むので、手がずいぶんと自由に使えることがよく分かります。

ムービーのモデルは、ペケペケちゃん@雨さんです。

雨さんへ、加圧帯を使った皮下輸液について、いくつか質問しました。
以下、そのQ&Aです。

Q1):一回につき、どのくらいの量の輸液を入れますか?
A1):1回100ml-150mlという、ものすごいアバウトさ…。
1回何ml、というよりは、500mlの輸液パックを4回に分けて入れる、って感じです。

Q2):輸液をしているときに時計を見ていましたが、時間を計って輸液の量を調節しているのだと思うけど、何分間、計っているの?
A2):計る時間は、 輸液パックの残量や針の刺さり具合で液の落ち方が微妙に違うんですが、

新しい輸液パック1回めは2分〜2分15秒、
2回めと3回めは2分半〜2分45秒 (前回の入り具合をパックの目盛りでなんとなく確認して調整。)。
最後は全部入るまでで、時間計測していません。
ラインまで空になるのを待つので、時によって4分ほどかかる時があります。

Q3):輸液中の、どこからどこまでの時間を計っているの?
A3):針を刺して、ラインを開けたら時間計測スタート →
それから針の入り具合を確認 →
しゅぽしゅぽ(加圧帯を握っている音です) →
圧固定(しゅぽしゅぽしたあと、「送気/脱気」つまみを「維持」位置に回すだけ。) →
時間が来たらライン閉める →
針を抜く →
消毒綿で針跡圧迫 → ペケペケ解放 → 加圧帯の圧を抜く。

という感じです。
つまり、通常の2分半とは、
ラインを開けて液の自然滴下が始まってから、ラインを閉めて液の滴下が止まるまでです。

前にもお伝えしたかもしれませんが、最初から圧をかけないのは、
穿刺後、いきなりびゅるる〜んっと液が入っていくと、ペケペケがすごく嫌がるからです。

Q4):けっこう腰のほうに針を刺しているようですが?
A4):以前、肩甲骨あたりで輸液をしていたら、前足にすぐ落ちてしまって、24時間経っても吸収されないようになってしまいました。
獣医に相談したところ、
『痛点は肩甲骨のあたりより腰に近いほうが多いのだけれど、毛細血管も多いので、輸液が早く吸収されるます。』と言われ、腰のほうに入れることにしました。
もう輸液を吸収できないほど悪くなっているのかと、相当ビビったんだけど、腰のほうに入れるようになってからは、ちゃんと吸収されるようになりました。

(雨さんのブログはこちら。パスワードは「pekechoro」です。)

 輸液パックから直接+テープ留め+加圧帯使用@スキあらば逃げようとする猫さんの場合

モデル:チョロちゃん@雨さん。 

初めに

 

準備編:ドアに引っ掛けるタイプのコート掛けに引っ掛けた、輸液パック+加圧帯セット。

この輸液セット+翼状針5コで税込\6820(2005年5月の価格です)。

一人がけソファにネコベッド設置。

アルコール綿とサージカルテープを準備。

アルコール綿は消毒するためというより、毛をぬらしてかき分け易くするため。(うちの先生は、毛をかき分けることすらしません。)

輸液中:かみついちゃろーか考え中。
テープはこんな感じ。
テープ留めは、逃げる気満々の猫さんが輸液中に動いたときに、針が抜けないようにするためです。

 

 くにゃくにゃ動く猫さんのテープ留めについて

情報提供者さま:ばさらちゃん&TARUさん

うちでも輸液の時、刺した針をテープで固定しますが、猫が暴れて首を持ち上げたりすると、首の変なところに針が刺さってしまいそうで怖いのでどうしたらよいかと、獣医さんに相談してみました。
すると「テープでは止めないほうがいいですよ。
止めなければ、体を動かす時にいっしょに皮膚の下を動きますから、変な所には刺さりません。
普通の状態なら一度刺したら抜けないし、暴れた時に抜けるのは返って安全なんですよ。」 とのこと。

一度針を刺したら、後は針は固定せずに前に飛び出さないように抑えることに注意すれば良いということです。
ということで、今日は元気がなくなってきているので、膝の上に縦に乗せて、針を刺し、そのまま両肩を抑えて飛び出さないようにしたら、なんとうまくいきました!
最もばさらがばりばり元気なら、何をしても大暴れして逃げるだろうから、この方法は使えないでしょう。
でも、点滴できない程暴れるくらい元気になって欲しいよ、ばさら。

それから我が家では色々試した結果、ヤツが首を上下に動かすので、その動きで針が下にずり落ちてこないようにするため、羽の部分ではなく、針の下から10センチくらいのチューブの部分を軽く止めるだけにする形でなんとか落ち着いています。
これなら、変な動きをされたときはちゃんと針が抜けてくれるので安全です。

  輸液が終了したら  

針を抜いた後、せっかく入れた輸液が針跡から漏れて出てくることがあります。
消毒綿で押さえておけばたいていすぐ止まりますが、たまにじわじわとしばらく漏れ続けることがあります。
そういうときは、猫さんに輸液の入っている側を上にして寝てもらいます。
背中の真ん中に輸液瘤ができているときは、箱座りをしててもらう。
するとだんだん液が下がってきて、胴の横や脇の下、前脚などに瘤が移動します。

漏れが治まって落ち着いたら、輸液瘤をマッサージしてあげると吸収がいいようです。
漏れがなくても針を抜いてすぐにマッサージすると漏れてくることがあるので注意。
しばらく経ってからやったほうがいいと思います。

温めた液を入れても身体が冷えてしまうようなので、保温に気をつけて。
特に手足は冷たくなりがちなので、こちらもマッサージしてあげよう。

★皮膚の軽い炎症に ナチュラルハイ プロポリス・クリーム

原産国:オーストラリア 
原材料:植物性成分とプロポリスのみ 
特徴:
非常に低刺激で高い消毒殺菌作用を持ち、湿疹、擦り傷、皮膚の乾燥、かゆみ等を優しくケアします。(購入したネットショップのHPより)

明らかな傷には抗生物質の軟膏を付けるのですが、針を刺したあたりが広範囲に赤く皮膚炎になっているような箇所には、このクリームを塗っておくと治りが早い(ような気がします)。

軟らかいテクスチャーなので、毛が固まってドレッド猫にもなりません。
オートミールのような色で、プロポリスなのかな?ハーブのような匂いがします。
私にはいい匂い。いっちゃんが嫌がる様子はありませんが、猫的にはどうなのか。
ちなみにペット用として販売されていますが、クリームの説明書を読むと人間用です。

注1)ごくまれに、プロポリスにアレルギーのある猫さんがいます。獣医さんに相談して、特に始めは注意しながら使ってください。
注2)いっちゃんの体質には合っているようですが、他の猫さんにとっても効果があるとは限りません。
注3)同じような効能の製品を使い比べて、『このクリームが一番良かった』ということではありません。
うちで使ったのが、たまたまこれだっただけです。 もっと良い製品(あなたの大事な猫さんの体質に合った製品)は、他にもたくさんあると思います。

  ちょっとした注意点など  

輸液の量を自分だけで判断しない。
その日の猫さんの脱水の状態や、毛艶、食欲、ご機嫌などを総合的に見て、飼い主さんが多少の量の調整をするくらいなら危険は少ないと思います。
しかし獣医さんから指示されたものから大きくはずれた量の輸液はしないこと。
何らかの理由があって、大幅に増やしたい、あるいは減らしたい場合には、必ず獣医さんに相談してからにしてください。
例えば分量が多すぎると心臓の負担になりますし、少なすぎると効果が望めません。 自己判断は危険です。

注射の場所について
最初は獣医さんから、背中の真ん中あたりから上にするようにと説明されました。
のちに背中側だったらどこでも、横のほうでも、皮をつかんでビヨンと伸びるところだったら大丈夫と言われました。
吸収は落ちるけど、お尻でも、なんだったら脚からでもいいそうです。

しかし雨さんの獣医さんは、腰に近い下半身のほうが毛細血管が多いので、吸収が良いという説明だったそうです。
実際に、肩甲骨の間に輸液をしていたときよりも、腰に近いほうにするようになってから、吸収がずっと早いとのこと。
ただし、腰に近い場所は毛細血管も多いけれど、 肩甲骨の間よりも痛点も多い。
なので、 針を刺したときに、痛い確率はちょっと上がってしまうかも。

注射する場所を毎回変える
毎日の場合は、毎回注射する場所を変える。
昨日は上のほうだったら今日は下のほう。
明日は右側で明後日は左側・・・というように、なるべく場所を離す。
近くに続けて注射すると、炎症や内出血、皮膚の硬化を起こしやすい。

背中の皮をつまむとき
背中の皮をぎゅっと強くつまみすぎると、猫が動いたときに、つねったのと同じ状態になり、摩擦で赤い皮膚炎になってしまうことがあります。
つい力が入ってしまいがちですがほどほどに。

刺すのに失敗したら
かかりつけの獣医さんは、2〜3回なら同じ翼状針で刺し直しても大丈夫と言います。
抜いた針をエタノールで消毒して、それが完全に乾いてからやり直します。
ただし、もし血が逆流してきた場合は、針・シリンジ・中身の液、みんな新しいものに変えます。

針は一回でも使うと針先が鈍って刺されたときに痛いので、私は同じ翼状針を使うのは嫌でした。
何回もお願いして、もう最後には泣きそうになりながら懇願して、予備の翼状針をもらえるようになってからは、失敗したらすぐに新しい針に変えるようにしています。
・・・失敗しなきゃいいんですけどね。なかなかこれが。

刺し直す場合は、失敗した場所からちょっと離れたところにします。
理由は、すぐ近くに針穴が2つ開いていると、そこから輸液が漏れやすい。痛いかもしれない。
皮膚が硬くなったり炎症が起こらないように。・・・等等。

失敗してすぐに針を抜いたところも、必ず消毒してね。

針を抜いたときに血がにじんだら
輸液終了後、針を抜くと血がにじんでくることがあります。
これは針が皮膚の血管を刺してしまうとなるそうです。
針を刺すときには、血管がないところを選んでやってくださいと言われましたが・・・。
目で見て分かるような太い血管には、もちろん刺しません。
しかし毛細血管は縦横無尽に皮膚を走っています。
じっと目を凝らして見るのですが・・・分からない〜。
・・・もし血がにじんできたら、消毒綿でしばらく押さえておきましょう。すぐに止まるはずです。

猫の姿勢
上でご紹介した写真のように、箱座りか、横にごろんと寝てもらってもOK。
横にごろんは背中心がずれるためか、思っていたよりも身体のわきに針を刺している場合がよくあります。
そしてなぜか横っちょに刺した場合、針を抜いたあとに針穴から輸液が漏れてくることがあります(うちの場合だけかも・・・)。

注射の傷について
もし注射の跡が赤くなったり、ひどい傷になりやすいようでしたら、皮膚を消毒したあとすぐに針を刺さずに1〜2分待ってから(消毒した皮膚が完全に乾いてから)にしたほうがいいそうです。
消毒薬が皮膚に浸透して殺菌する時間を十分に与えるため。

消毒綿について
以前はタッパーにコットンと消毒用エタノールを入れて、消毒綿を作りおきしていましたが、それはいけないそうです。
エタノールは揮発性なので、どんどん成分が飛んでしまうため、作りおきしてもせいぜい3日しか持たない。
使うたびに新しく作るほうがいいと獣医さんに言われました。

消毒不要説?
獣医さんによっては、皮下輸液の際の消毒は必要ないという方もいます。
ただし免疫力が大きく落ちている場合は、この限りではありません。
詳しくは体験レポート掲示板、『皮下輸液の際の消毒について』でどうぞ。

  おまけ 

★雑学など〜自宅皮下輸液は法律違反?
自宅で飼い主さんによる皮下輸液を許可していない病院もあります。
自治体によっては法に触れるのではないかという話題が掲示板で出まして、そのときに調べたことです。

最初に世田谷保健所に電話してみました。
「管轄が違うので、 『産業労働局 農林水産部 食品安全室 動物薬事衛生係』 に問い合わせしてください」とのこと。
獣医さんに関することは、ほとんど全てこちらの管轄なのだそうです(含む開業許可など) 。
素直に動物薬事衛生係に電話して、うその状況をでっちあげて質問しました。
以下、会話です。

私「世田谷区に住んでいますが、獣医さんから指導していただいて、家で猫に皮下輸液をしています。
関西在住の知人は、獣医さんから自宅皮下輸液の許可が出なかったそうです。
自宅で飼い主が皮下輸液をすることについて、地域によって何か条例というか規制が違うものなのですか?
あるいは何か違法なことがあったら教えて下さい」

係「自分で輸液しているのは、自分の猫ですか?」
私「はい」
係り「なら法律的な問題は何もありません。
ただしよその猫や野良猫や、繁殖や販売を目的として飼育している猫に自分で輸液すると、獣医療法違反になります。」

私「獣医師じゃない人間が、針を使って自分の猫に輸液することについては、問題ないんですね?」
係「ずっと自分で飼ってて、これからも自分で飼い続ける猫になら、問題はありません。
ただし針や注射器や点滴のパックなど器具一式を、必ず獣医さんに返却してください。
家庭のゴミとして捨てるのは、医療廃棄物に関する法律に違反します。」

だそうです。
どんな状態の猫、どんな飼い主にでも2つ返事で自宅皮下輸液を簡単に許可する先生がいるいっぽう、許可しない獣医さんにもそれなりの理由があるように思います。
猫の体調をしっかり把握しつつ輸液の量を変えたり添加するビタミン剤や薬を変えたりなど、細やかで万全な医療をと心がけていたら、自宅で飼い主による輸液は認められないという先生もいるでしょう。
しかし輸液のための通院が毎日や一日おきで、猫さんのストレスや体力の消耗が気になるため自宅皮下輸液を希望する飼い主さんは多いと思います。
病院の方針によって違いはあると思いますが、基本的には猫さんの体調が安定してて、かつ頻繁な輸液が必要な場合には許可されやすいようです。
一度はダメと断られても、その後猫さんの体調が落ち着き、飼い主さんと獣医さんの間にある種の信頼関係ができたことから、のちに許可になった方もいます。
こちらの希望をはっきり伝える、どんなことでも疑問に感じたら質問するなど、獣医さんと話し合いながら治療方針を決めてくださいね。

  自宅で腹膜透析なら  

いっちゃんはやっていませんが、自宅で腹膜透析を経験した猫さんもいます。
詳細は腹膜透析のページでご覧ください。


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